採用における偽陰性について

採用における偽陰性について

Clock Icon2024.05.25
こんにちわ。組織開発がミッションの人事グループ・組織開発室に所属しているてぃーびーです。

採用において、選考時の見極めは重要です。このとき、「十分な実力を持っているかどうか?」「カルチャーにマッチするかどうか?」のような「誤って合格にすること」が発生しないようにするための試行錯誤をすることはよくあるかと思います。一方で、「本当は十分に実力がある人を落としてしまっているかどうか?」「本当はカルチャーにマッチしている人を落としてしまっていないか?」などのような「誤って不合格にすること」が発生しないようにするための試行錯誤も必要です。

これらは片方を強化すれば片方が弱くなりやすい関係です。そして「誤って合格にすること」に対する対策が行われやすい傾向にあり、結果的にほっておくと採用基準がどんどん厳しくなり、「誤って不合格にすること」が発生する可能性が高まっていきます。

そこで、今回はこういったケースに関する概念である「採用における偽陰性」についてまとめます。

採用における偽陰性とは?

「採用における偽陰性」を考える上で、先に「採用における偽陽性」について触れます。「採用における偽陽性」は、本来不採用にするはずの候補者さんを採用してしまうケースを指します。

そして「採用における偽陰性」とは、本来採用するはずの優秀な候補者さんを不採用と判断してしまうケースを指します。この誤判定により、会社は優れた人材を見逃してしまうことになります。

広義の「採用における偽陰性」は選考に限らず、認知や応募の段階もありえます。例えば、

  • 認知のケース - 会社のイメージとしてレベルが高いと認識されすぎていて、本来なら合格できる人が応募を控える
  • 応募のケース - 求人要件が本来必要な内容より厳しすぎて、本来なら合格できる人が応募を控える
などです。

採用における偽陰性の要因

偽陰性は以下のような要因によって発生することがあります。
  • 認知のメッセージが実態と乖離がありハードルを上げている
  • 求人票の求人要件が実態に比べて厳しすぎる
  • 選考の基準が本来入社後に必要な能力水準に比べて厳しすぎる
  • 面接官の質問が曖昧であったり、わかりにくく、意図と異なる回答が発生する
  • 面接や技術選考の際に緊張して本来の実力を出せない
例えば「選考基準を明確に作らず、面接官が思い思いに好きな質問をして、好きな判断基準で合否を決めている」ということがあった場合、面接官によっては本来落とすべきではない基準で落としてしまう場合も発生するでしょう。

採用における偽陰性の難しさ

「採用における偽陰性」はある難しさを抱えています。発生したことを把握することが困難であるためです。自社の選考で不採用になった候補者さんが実は優秀で自社にマッチする人だったかどうかは確認のしようがありません
この難しさは「採用における偽陽性」との対比をするとよりわかりやすくなります。「採用における偽陽性」について考えた場合、採用すべきではない人を採用した結果、入社後にその状態に気づくことができるタイミングがあります。実力の不足にしろ、カルチャーのアンマッチにしろ、おそらく入社1年以内のタイミングで判断はできるでしょう。そのため、1年以内の早期退職の有無やオンボーディングの状況に対するふりかえりを継続的に実施し、パフォーマンスが不足していた原因が採用時点の問題だったことを確認できれば選考内容の継続的な改善をすることで対策をすることができます。この場合、問題が発生したタイミング(=選考時点)と問題が把握できるタイミング(=早期退職やオンボーディング後の経過確認時点)と時間が開くため、採用時点の情報をATS(候補者管理システム)にしっかりと記録しておく必要があるでしょう。とはいえ、改善のための材料を意図的に残し、対策することができるわけです。

採用における偽陰性の予防

「偽陰性の難しさ」で紹介したような理由により、明確に偽陰性が発生したことを確認したうえで対策するようなことはできません。

そのため、偽陰性が存在しているかどうかが分からなくても、有効であろう内容について取り組んでおくことで偽陰性の発生度を下げる予防策を講じることができます。例えば

  • 認知のための発信内容を実態に即したものにする
    • 本来よりも高いレベルが求められる場所であるかのように情報を発信しないこと
    • スタープレイヤーだけではなく、ジュニアから立ち上がったメンバーに関する情報も発信すること
  • 求人要件を盛り込みすぎず、本当に入社に必要な条件に絞り込む
    • あれもこれも盛り込んだ結果、既存メンバーでも合格できないような求人要件にしないこと
    • 入社時点で満たしていなくても、基本的な能力があれば後からキャッチアップできるような要件を最小限にすること
      • 例えば任意のツールの利用経験は本当に必須要件に必要かどうか検討の余地があります。ある程度優秀な方であればツールの利用経験がなくてもすぐに習得できるためです
  • 選考の基準を明確にし、適度な難易度設定にし、面接官の個人差を無くす
    • 選考基準がない場合、まずは選考基準を決めること
    • 選考基準があるが、人によってその基準の判断がズレるような抽象的な基準の場合、認識統一できる粒度まで明確にすること
    • 選考基準があるが、面接官の慣れによって選考の実施や最終判断がぶれてしまう場合、面接官トレーニングやペア面接からのふりかえりなどで評価の判断基準を揃えていくこと
  • 候補者さんが選考で本来の実力を発揮できるようにする
    • 緊張をほぐすための工夫をすること
    • 面接や実技選考が何を問うを明示し、意図のそれた回答にならないようにすること
などのような予防策がありえるでしょう。また、こういった取り組みを実施できるように認知施策・求人表・選考内容などに関して継続的なふりかえりと改善を実施していることが土台になります。

まとめ

「採用における偽陰性」についてまとめました。

「採用における偽陰性」は、それ自体が発生したことを把握しにくいですが、本来なら入社して欲しかった人を逃す可能性があるという意味で重要な要素です。予防の項目で書いたような取り組みを通して発生しないように取り組んで行く必要があるでしょう。

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